![]() 橋本 廸生 横浜市立大学附属病院 医療安全管理学 教授 |
昨年8月の会員総会において新しい理事体制をご承認いただきました。本年1月から理事長として新しい執行体制で学会運営にあたることになりましたので、ご挨拶申し上げます。 本学会は今年50周年を迎える歴史のある学術団体です。戦後、我が国の医療提供全般に近代化が求められるなかで、とくに病院医療の発展に心を砕いた先達が自らの切磋琢磨のために開いた研究会が本学会の嚆矢である、と聞きます。50年の節目にあたり、先輩達の意気込みと努力を次代に継ぎ、さらに発展させるためのエンジンになることが今執行部の主たる役割であると考えます。 任期の2年の間にできることはそう多くはありませんが、以下の二点に力点を置きたいと考えています。学会員の皆様にご協力をお願いしたいことがらです。 第一に、学会員にとっての本学会の位置づけに関係することです。ある専門領域ではそのなかでさらに専門分化した学会が複数存在することは一般的です。臨床医学の専門領域で顕著です。しかし、それでも、「この領域でのプライマリーな学会」と言われる学会の存在があります。そして、研究者であればその学会に属していることが当たり前という認識があります。それは、「領域の基本がそこに在る」という了解でもあります。 本学会の専門領域でもこの十数年のあいだに現場応用的な分野の普及に端緒を有する学会がいくつか誕生しました。私自身もそうですが、本学会の役員でそれらの学会の役員を兼ねている方も少なくありません。それらの学術総会開催時には、多くの病院職員が業務と関連のあるテーマに参加し全体として活況を呈しているように見えます。会員規模に比して総会参加者の多いことが特徴です。医療界のトピックスの勉強、病院等でのマネジメント活動の報告や情報収集が多くの参加者のモチベーションになっているように思います。現場効用の点からそのような学会の存在意義は高いと考えます。 一方、本学会は伝統的にそこに立脚していないし本来の存在意義もそこにはないと私自身は理解しています。医療サービスを対象とする科学的分析方法についての議論をし、それに基づく深い洞察によって新しい視界が展開することに主たる関心を置く役割が本学会にはあると考えます。初学者には厳しい側面がありますが、同時に学問的な悦びを感じさせる場でもあります。本年の学術総会は学会設立50周年を記念する総会でもあります。本号巻頭言にあるように、池上総会長は、医療・病院管理学の役割と今後の展望をテーマに据えて、基本的で根幹的な議論をすることを企画されています。 近年、医療サービスのマネジメントに関する学部教育や大学院教育が盛んになってきています。特に後者では、上述のリサーチ・マインドの重要性が強調され、科学的分析のトレーニングもされている筈です。その意味で、本学会は、彼ら大学院学生にとっても「この領域でのプライマリーな学会」と位置づけられるべきです。前執行部の提案で年会費の「学生優遇制度」が今年度から始まります。教育機関に所属し本学会の役員でもある会員は、上の趣旨を踏まえて大学院生を本学会に結集させるべく努力をお願いします。学会事務局は最大限の支援をさせていただきます。 これに関して、もうひとつ触れておきたいことがあります。学会員のあいだに自分のキャリアにおいて「プライマリーな学会」であることの認識が浸透すると、学術総会参加へのモチベーションの向上が期待できます。昨年の学術総会は、3月の震災や開催時期が例年より前倒しだったことの要因が重なり、参加者数が例年を大幅に下回る結果となりました。学術総会の内容がとても良く刺激的だっただけに残念至極です。学会本部事務局としてももっと広報が必要だったとの反省もあるのですが、学会員それぞれのなかでの本学会への帰属意識が必ずしも強固ではないのかもしれない、との印象を持つに至りました。因みに6月と8月に開催された2つの関連学会の総会は前年度を超える参加者があったようです。 ともあれ、大多数の学会員から「プライマリーな学会」と言われる学会にしたいと考えます。皆さんの知恵をお借りしたいと思います。 さて、第二に力点をおきたいことは、世代交代の道筋をつけることです。実はここ数年間にわたり執行部とくに三役では強く意識してきたことです。ここ数期の理事層をみわたすと団塊の世代とそれ以降数年の年代の者が大半でした。実力者揃いではありますが、時間の経過には抗らいようもありません。ボリュームゾーンが去ったあと、貧弱な体制になったのでは申し訳なく、早期に学会組織の知的構成の代謝を促進しなければならないと考えていました。その手始めとして、昨年の理事選挙において所定のルールで選出された11名の理事に加えて、理事長の推薦する理事4名を世代交代の観点から指名させていただきました。4名とも大学教員としてより若い世代の育成に責任をお持ちの方々です。そして何より、上述の本学会のプライマリーな部分をより強固にしつつ継続して発展させていく実力を具備されていると確信できる方々です。私の見る限り、この4名の方達のほかにも本学会の評議員のなかには優秀な若い世代が研究者として所属されています。今後は、若い世代の研究活動の切磋琢磨を学会の活動の中心に据えて、なおかつ医療・病院管理学を体系的に提示できる具体的方策を求めていくことになるかと考えます。これについても皆様のコミットメントを切にお願いする次第です。 以上、この2年間に注力したいことを二点申し上げました。他の事項も含め、今後とも積極的に発信していく所存です。ご協力よろしくお願い致します。 (「日本医療・病院管理学会誌」Vol.49-1(2012年1月掲載) |