構造・過程・結果

Structure,Process,Outcome

 医療の質を測定・評価するための方法論を構成する基本的な概念である。A.Donabedianが主唱した。この概念の応用範囲は広く,多少拡張すれば,医療などサービス財を提供する産業のみでなく殆どの産業の事業体の評価において適用可能である。つまり,「産出されるもの(outcome)」を定義し,必要な「資源(structure)」を用意し,「どんなやり方(process)」で生産するか,と考えれば良いからである。Donabedian自身は,1996年の来日時に,「ごく当たり前の常識的な考え方なのに,Mr.StructureProcessOutcomeと呼ばれることがある」と苦笑していた。彼自身の説明によると,1.構造(structure)とは,医療が提供される条件を構成する要素であり,(1)施設や設備などの物的資源,(2)医療専門職の人数やその多様性などの人材資源,(3)教育や研究,提供実績のレヴュー,ケアの提供手法などの組織資源,を指す。2.過程(process)とは,ケアを構成する要素の活動であり,診断,治療,リハビリテーション,患者教育などの活動を指す。そしてそれらは医療専門職が実践するものだけでなく,患者自身や家族の寄与も視野に入れる。3.結果(outcome)とは,提供された医療に起因する個人や集団の変化を指し,(1)健康状態の変化,(2)将来の健康状態に影響を及ぼしうる知識や行動の変化,(3)医療の過程や結果に対する患者や家族の満足度,がその内容である。

 次に,測定・評価という観点からそれぞれの特徴を述べる。構造(structure)については,(1)計数可能であるため測定が容易である。(2)質を評価する上では最も間接的である。過程(process)については,(1)介入や変更が可能である。(2)記録によって実施状況が確認できる。(3)結果への反映が必ずしも明確ではないものが多い。結果(outcome)については,(1)測定するために指標化が必要である。(2)ケースミックスによる補正が必要であるが,限局的な指標以外では限界が大きい。そのため,他病院間の比較には強い注意が必要である。自施設の経緯時的変化の評価には有用とされる。(3)評価に時間を要する指標がある。(例:5年後生存率は,5年経過した時点で指標化可能である。また,その場合,5年前の能力を測定していることになる)(4)構造(structure)や過程(rocess)との関係が明確でない。(5)数量を適正に扱い評価するためには統計学的な能力が必要である。

 Donabedianは,これら3つの情報を個別に質の指標として用いる場合には,それぞれの関係によく留意する必要があると述べ,信頼できる有益な情報は,構造,過程,結果を合わせて検討することによって得られる,と指摘している。

【関連用語】

Avedis Donabedian Quality Indicator