Ethical Guidelines for Medical and Health Research Involving Human Subjects
人を対象とする医学系研究に関する倫理指針は,研究対象者の人権の保護,安全の保持及び福祉の向上を図りつつ,人を対象とする医学系研究の科学的な質及び結果の信頼性並びに倫理的妥当性を確保することを主な目的として,研究者等の責務等(第2章),研究計画書(第3章),倫理審査委員会(第4章),インフォームド・コンセント等(第5章),個人情報等(第6章),重篤な有害事象への対応(第7章),研究の信頼性確保(第8章)等に関して,研究者等,研究機関の長,倫理審査委員会その他の関係者の遵守事項について定めている。その本指針の主な内容は,以下の10点である。
- 研究機関の長及び研究責任者等の責務に関する規定(第2章関係)
研究機関の長へ研究に対する総括的な監督義務を課すとともに,研究責任者の責務を明確化した。また,研究者への教育・研修の規定を充実した。 - いわゆるバンク・アーカイブに関する規定(第1章,第3章関係)
試料・情報を収集し,他の研究機関に反復継続して研究用に提供する機関について,「試料・情報の収集・分譲を行う機関」として位置付け,本指針を適用することとした。 - 研究に関する登録・公表に関する規定(第3章関係)
研究責任者は,介入を行う研究を実施する場合には,本指針の規定により,あらかじめ,当該研究の概要を公開データベースに登録し,研究計画書の変更及び研究の進捗に応じて適宜登録内容を更新し,また,研究を終了したときは,遅滞なく,当該研究の結果を登録しなければならないこととした。 - 倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保に関する規定 (第4章関係)
委員構成,成立要件,教育・研修の規定,倫理審査委員会の情報公開に関する規定を充実した。本指針の規定による倫理審査委員会の設置者は,倫理審査委員会の組織及び運営に関する規程並びに委員名簿を倫理審査委員会報告システムにおいて公表するものとする。なお,既に臨床研究倫理指針の規定により,同システムにおいて当該規程及び委員名簿を公表している倫理審査委員会の設置者は,改めて同システムにおいて公表することを要しないものとする。 - インフォームド・コンセント等に関する規定(第5章関係)
研究対象者に生じる負担・リスクに応じて,文書又は口頭による説明・同意等,インフォームド・コンセントの手続を整理した。また,未成年者等を研究対象者とする場合,親権者等のインフォームド・コンセントに加えて,研究対象者本人にも理解力に応じた分かりやすい説明を行い,研究についての賛意(インフォームド・アセント)を得るよう努めることとした。 - 個人情報等に関する規定(第6章関係)
死者について特定の個人を識別することができる情報について,研究者等及び研究機関の長の責務規定を充実した。また,研究対象者の個人情報に限らず,研究の実施に伴って取得される個人情報等を広く対象とすることとした。 - 利益相反の管理に関する規定(第8章関係)
研究責任者や研究者がとるべき措置を明確化した。 - 研究に関する試料・情報等の保管に関する規定(第8章関係)
侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い,介入を行う研究に係る情報等は,研究終了後5年又は結果の最終公表後3年のいずれか遅い日までの保管を新たに求めることとした。 - モニタリング・監査に関する規定(第8章関係)
侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い,介入を行う研究について,研究責任者に対し,モニタリングや必要に応じた監査の実施を新たに求めることとした。 - 施行日(第9章関係)
2005年4月1日から施行する。ただし,第20規定(モニタリング・監査に関する規定)については,同年10月1日から施行することとする。これにより,2005年4月1日以降に研究機関の長が新たに実施を許可する研究は,本指針の規定によるものとする。第20の規定については,同年9月30日まで適用することを要しないが,当該研究については,あらかじめ研究計画書に10月1日以降のモニタリング・監査の実施体制の見込みについて記載することが望ましい。