OSCE

Objective Structured Clinical Examination

 OSCE(Objective Structured Clinical Examination)とは,医学・歯学教育において,臨床実習前後の学生評価のための共用試験の中で,臨床技能・態度を評価する客観的臨床能力試験として実施されているものである。

 モデル・コア・カリキュラム(医学教育および歯学教育モデル・コア・カリキュラム-教育内容ガイドライン)には,科学技術の進歩により膨大な量となった医学・歯学教育の内容を必要最小限の必須の内容として精選し,学生が卒業までに習得して身に付けておくべき実践的能力(competences)が到達目標として客観的に評価できるよう具体的かつ明確に示されている。臨床実習(診療参加型臨床実習:Bed Side Learning)では,医学生等も診療チームの一員として患者の診療に参加しながら学ぶことが求められており,患者に接するために必要不可欠な知識と技能・態度が備わっていることが求められている。共用試験は,そのような知識と技能・態度が身についているかどうかを評価する全国共通の標準評価試験であり,公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構が実施・運用している。臨床実習に必要な知識については総合的理解力をコンピュータを用いて客観的に評価するCBT(Computer Based Testing)が実施されており,臨床実習前に身につけるべき臨床技能・態度についてはPre-CC OSCE(Pre-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination),卒業後の臨床研修を開始できるレベルに到達できたかを評価するために,医学系ではPost-CC OSCEが実施されている。共用試験は公的に位置付けられており(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律,医師法),Pre-CC OSCEは,診療参加型臨床実習を行う学生が医師の指導監督の下で医行為を行う能力を有することを社会に保証する意味がある(Student Doctor)。Post-CC OSCEは,臨床実習を修了した医学生が卒後の臨床研修開始時に必要な臨床能力を有することを保証する意味がある。

 臨床実習前に身につけるべき具体的な技能・態度の内容については「診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目」に以下の構成でとりまとめられている。Ⅰ. 診療参加型臨床実習における技能と態度について,Ⅱ. 医療面接および身体診察,手技に関する共通の学修・評価項目,Ⅲ. 医療面接,Ⅳ. 全身状態とバイタルサイン,(以下省略)。これらの学修・評価項目に準拠して,技能・態度を評価する複数のステーション(場面)がOSCEには用意されている。各ステーションには,模擬患者,OSCE評価者(教員),必要なシミュレーター等の機器が配置されており,ステーション毎に課題(シナリオ)が設定されている。評価を受ける学生は順番にステーションに入り,指定された課題についての技能を一定時間内に実施する。OSCEの評価者は大学内部の教員(内部評価者)と他大学教員(外部評価者)から構成されており,標準的な共通評価方法に基づき,学生の技能と態度を評価する。OSCEを適正に実施し,公平性・客観性・透明性を確保するために,公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構から他大学教員がモニターとして派遣され,実施状況を監視している。

 卒業までの臨床実習を通して身につけるべき内容については「臨床研修開始時に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目」にとりまとめられている。

 CBTおよびPre-CC OSCE(医学部4年生),Post-CC OSCE(医学部6年生)の合格,医師国家試験の合格を経て卒後医師臨床研修へと続くシームレスな医師養成の仕組みが整えられてきている。

 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)第5条による改正後の医師法(昭和23年法律第201号。以下「法」という。)第17条の2第1項は,大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるもの(以下「共用試験」という。)に合格した医学生について,法第17条の規定にかかわらず,医師の指導監督のもとに一定の医業を行うことができることとしている。共用試験は,医師法第十七条の二第一項に規定する大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験を定める省令(令和4年11月公布。以下「共用試験省令」という。)で定められる。

 2025年4月以降,公的化後の共用試験への合格が国家試験の受験要件になる。厚生労働省は,公的化前の共用試験を3年次に受験した医学生について,経過措置として個別の対応を行う考えを示している。

【関連用語】

モデル・コア・カリキュラム,共用試験,臨床実習,CBT