カリキュラム・プランニング

Curriculum Planning

 カリキュラムとは,「教育活動計画書」と言い換えられる。学習者の学びの質を担保し,学習成果を得るために妥当性や信頼性を考慮した教育を具体化する実施計画書である。教育者が意図した学びだけを必ずしも学習者が習得するわけではないことから,学習者が習得したものすべてをカリキュラムと考えることが医学教育では一般的とされる。カリキュラムを単に「授業の時間割」と間違えることが多く,その点は注意が必要である。特に成人教育の観点では,学習者がどのような問題を抱え,興味関心は何かといったニーズを把握することによって,学習者の多様性を考慮したカリキュラムを設計(カリキュラム・プランニング)することが求められる。逆向き設計論(Wiggins&McTighe 2012)は,評価方法を先に検討しカリキュラム全体の改善を図る手法を提唱しており,(1)求められる結果(目標),(2)承認できる証拠(評価),(3)学習経験と指導(学習と指導の進め方)の三つをひとつとしている。目標(アウトカム)では,学習によって獲得する知識だけではなく技能や態度・行動を示す「行動目標」を明確に位置付ける。行動目標の到達に必要な教育方略を検討する場合には実施する具体的な教育方法,資源,順序,人数,時間などを検討する。昨今,形式的な知識の理解を中心とした受動型の講義だけでなく,アクティブラーニング(能動的学習)による参加や体験を通した方略も増えている。カリキュラムの立案者は目標に照らし,どの教育方法が適しているか,また実施にあたり数々の制約を勘案し現実的に可能かを検討する。同時に立案者は,学習者の目標到達を確認する明確な評価方法や評価基準をあらかじめ示す必要がある。評価には主に形成的評価,総括的評価の二つがあり,前者はカリキュラムの合否に関わらず学習過程で逐次フィードバックを与え,学習者の理解を深め変化を促す「学習のための評価」である。後者はカリキュラムの合否やアカウンタビリティを果たすものであり「学習の評価」である。総括的評価には知識の理解,獲得を確認する客観式の多肢選択問題や論述試験の他に,知識を応用し実際に課題に取り組むことで到達程度を評価するパフォーマンス評価や,カリキュラム全体を通して知識や活動態度,学習成果を統合的に評価するポートフォリオ評価が用いられる場合がある。どの評価方法を採用するかについては教育目標分類(Taxonomy)を考慮し,教育目標に合致したものを用いる。これらカリキュラム・プランニングの一連は,実施後にカリキュラム自体の評価を行い,振り返りや改善等を継続的に実施する。

【関連用語】

ニーズ,目標,教育方略,評価方法,パフォーマンス評価,ポートフォリオ評価