病診連携

Hospital-Clinic Collaboration(仮訳)

 「病診連携」は,診療所と病院が連携することにより包括的で一貫性ある医療サービスを患者に提供することを指している。具体的には診療所の医師(かかりつけ医)が,より専門的な医療が必要と判断したとき,先進的機器を備えた病院に患者を紹介し,病院は紹介された患者の検査や診察を優先的に行うほか,結果をかかりつけ医にフィードバックする等である。病診連携の取り組みとしては,紹介の他に,病院を退院等する患者に対し,かかりつけ医や自宅に近い診療所を紹介する「逆紹介」や,かかりつけ医が患者を紹介した際に,病院の医師と共同して,その病院には勤務していない,かかりつけ医が診療等にあたることのできる病床を設ける「開放病床」,MRI,CTなど高度医療機器をその病院に勤務しない医師が使うことができるようにする「病院の医療機器等の開放」,診療所の医師が診療所の診療時間外に病院で診療にあたる診療支援などがある。

 医療制度面では第2次医療法改正(1992年)で「特定機能病院」と「療養型病床群」が制度化され,医療機関の機能分化が始まった。急速に進む高齢化,疾病構造の変化に伴い医療機関の機能分化はさらに重要性を増し,第3次医療法改正(1997年)では「地域医療支援病院」の制度が導入された。地域医療支援病院は,かかりつけ医等に対する支援として,紹介患者への医療提供,医療機器の共同利用や開放,救急医療の提供,地域の医療従事者の研修,逆紹介などを行う。日本は患者が全国どの医療機関でも受診できるフリーアクセスとよばれる制度を有しているが,軽症でも大病院を受診することで大病院が圧迫されるという問題が指摘されてきた。200床以上の病院を紹介状なしで初めて受診する場合は,病院の定める初診料を自己負担とするなどの措置がとられてきたが,2016年4月からは緊急の場合を除き,大病院(特定機能病院,一般病床500床以上の地域医療支援病院)を紹介状なしで受診する場合は特別の料金がかかる制度が導入された。その後の診療報酬改定で中規模の病院も対象となり,2022年10月時点では,特定機能病院,地域医療支援病院(一般病床200床以上に限る),紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)を紹介状なしで受診する場合は特別の料金がかかるようになっている。

 制度として医療機関の機能分化をはかり,患者が症状に適した医療機関で適切な医療を受けられるよう,診療所と病院が機能・役割を分担し,相互の連携をはかるのが病診連携である。地域の医療機関が連携をはかることを一般に「医療連携」とよぶ。その類型としては病診連携の他に,診療所の間の連携である「診診連携」や,病院と病院の連携である「病病連携」がある。医療連携の分類としては,さらに,紹介の方向に着目した「前方連携」と「後方連携」がある。「前方連携」は診療所から病院へ「紹介」を行う場合をいい,「後方連携」は急性期治療が終了した段階で,病院から地域の診療所への「逆紹介」を行う場合をいう。

【関連用語】

逆紹介,開放病床,医療法,特定機能病院,療養型病床群,地域医療支援病院,紹介受診重点医療機関,フリーアクセス,医療連携,地域医療連携,診診連携,病病連携,前方連携,後方連携