保健医療福祉連携

Coordination and Cooperation among Various Healthcare Providers

 医療連携(healthcare cooperation)は当然のことながら,同一医療機関内においても診療科間,他職種間で必要欠くべからざるものとして実践されている。医療ケア(heathcare)の内容が高度化し,専門化・尖端化が進んだため,一人・一職種の医療者(healthcare provider)のみで医療を完結することは,ほぼ不可能だからである。

 しかるに「保健医療福祉連携」という用語においては,一般的に,病院―診療所―保険調剤薬局―在宅医療機関(訪問診療・訪問看護)―介護施設における管理を巡る連携を指す。患者ないし被介護者(healthcare taker)の立場から考えれば,急性期的疾患ないし慢性疾患の増悪に対する高度/急性期/先進医療と慢性期療養,日常外来診療と健康相談,さらには介護を,切れ目なく,効率的に自分の複数疾患を踏まえて適切適時的に提供してもらえる仕組みが要望されるところである。これがcontinuity of careと呼ばれる,医療(介護)の連携のあり方である。

 2005年以降の国の方針として,医療の場面においては,地域のクリニックやcommnunity hospitalのかかりつけ医をハブとして連携を行うことが方針として定められている。さらに保険調剤薬局の薬剤師にも,処方箋情報を軸として,患者に健康情報の提供や服薬管理に一歩踏み込んだ役割を担ってもらい,健康管理の一翼を担えるように,「かかりつけ薬剤師」制が2016年から開始された。

 また,介護の場面においては,地域かかりつけ医との協働を行いつつ地域包括支援センター(保健師・主任ケアマネジャー・社会福祉士等が軸となって構成)において被介護者の管理をとりもつ仕組みが構想されている。

 連携は単純に多施設医療者,他職種が単純にそれぞれ患者に対応すれば出来るものではないことは明らかであり,患者の健康問題(プロブレム)を統体的に踏まえつつ,必要に応じた他階層医療機関への照会・紹介や転送,さらにはリハビリ機関や介護施設利用の指導などを行ってもらうことが,かかりつけ医には求められているのである。急性期病院―慢性期療養リハ病院―クリニックにおいて共通の診療パスを稼働させる取組み(地域連携パス)の適用も一つの有効な連携のツールになるが,一般的に,連携が有効に機能するためには,かかりつけ医を担う医師が真の意味で家庭医的な素養を持ち,患者をgeneralに診療できる(patient-centeredness of careを実践できる)か,ということ,ならびに,各階層の医療機関において,いかに適時的かつ簡潔でわかりやすいサマリー(continuity of care record)を,最新(ないし直近)の形で双方向に共有できるかどうか,が鍵となろう。さらに処方を巡って医療機関と保険調剤薬局が今まで以上の診療情報・処方情報の共有を行う事がないと,「かかりつけ薬剤師」のあり方も形骸化してしまうだろう。

【関連用語】

healthcare,continuity of care,かかりつけ医,地域包括支援センター,健康問題(プロブレム),地域連携パス,patient-centeredness of care,サマリー,continuity of care record