医療技術評価

Health Technology Assessment

 医療技術評価とは、医薬品・医療機器等の医療技術を対象として、医学的・社会的・経済的・倫理的な問題等を系統的に整理し、意思決定に反映させる一連の過程を言う。最近では、欧米諸国を中心に、HTAのうちの医療経済評価のを研究や利用積極的が進んでいるに導入し、保険適用の可否の判断や価格設定、診療ガイドラインの策定等に活用されてきている。

 医療経済評価とは,医療における複数の選択肢について,各々の「費用」と「効果」を計算し,相対的な費用対効果を分析する方法である。特に薬剤を対象とした医療経済評価を薬剤経済学(pharmacoeconomics)と呼ぶ場合がある。

 費用には,薬剤費などの医療技術そのものの価格のみに限らず,その医療技術を用いる場合に付随して行われる検査の費用や,合併症が生じた場合の治療費など,当該医療技術に関連して発生するさまざまな費用項目を含める。医療費のみならず,介護費用や,患者本人や家族等の生産性損失を費用に含める場合もある。比較対照と比べた場合の当該医療技術の「増分費用」を「増分効果」で除した増分費用効果比(Incremental Cost-effectiveness Ratio,ICER)の値を元に費用対効果の良し悪しを評価することが一般的であり,その場合,効果は質調整生存年(Quality-adjusted life year,QALY)という効果指標を用いることが増えている。

 1質調整生存年とは「1年分の健康な命の価値」に相当する概念であり,完全に健康な状態のスコアを1,死亡を0としたスケールにおいて,半身不随の状態のスコアは0.5である,といった具合に,各健康状態におけるQOLを「効用値」としてスコア化し,これと生存年数とを掛け合わせることにより,QOLと生存期間の両方を総合評価した指標である。例えば,効用値0.5の健康状態で10年間生存した場合には,0.5×10=5質調整生存年 ということになる。

 医療経済評価の分析結果を医療技術の価格算定や償還の可否の判断に用いる国が増えてきている。我が国においても,中医協に費用対効果評価専門部会ならびに費用対効果評価専門組織が設置され,2016年度から一部の既収載医薬品や医療機器を対象として,費用対効果の観点を価格政策に反映させることとなった。また,政策レベルだけではなく診療現場における治療選択にも費用対効果の考え方を反映することが重要と考えられており,診療ガイドラインにおいて費用対効果を考慮することも増えてきている。

【関連用語】

医療経済評価,薬剤経済学,費用対効果,増分費用効果比: ICER,質調整 年: QALY