Interoperability
一般に,組織内には全ての情報システムや機器が一度に,統一的に導入されるわけではなく,異なるベンダーから,異なる時期に,ばらばらに導入される。すると情報システム間で,あるいは機器とシステムの間で,通信・データ交換ができないという事態が生じる。相互運用性(interoperability)とは,2つ以上のシステムあるいは機器の間で情報交換ができ,交換された情報を想定したとおりに使用し得る能力のことをいう。情報の通信はどのようなシステムにおいても必須であり,病院情報システムにおいては多様なシステム,アプリケーションの間でのデータ交換が不可欠である。異なる系統のシステムで,患者情報を統合的に扱うには,情報は1つのシステムから他のシステムに転送される必要がある。単純な方法として,情報交換が必要な2つのシステム(機器)の間で,インタフェースを設けることが考えられるが,2つのシステム間ごとにカスタマイズしたインタフェースを設けていたのでは,到底,一貫性ある開発・維持・管理はできない。そこで,2つのシステム間ごとに別途のインタフェースを設けるのではなく,標準化された構文で1つのインタフェースを通じてデータ(メッセージ)を交換する方法が相互運用性を実現するために取られている。
相互運用性には「構文的相互運用性(Syntactic Interoperability)」と「意味的相互運用性(Semantic Interoperability)」がある。前者は一定の文法に則って交換したい情報を表現することである。後者は受信した情報を受信側で理解し,使用できる能力で,例えば病名,処方,臨床検査などの内容を送信側,受信側が共有できることであり,標準的用語・コードが用いられる。構文的相互運用性は,技術者,システムベンダーに委ねられ,ユーザが認識することはほとんどない。しかし医療専門職,医療施設,意思決定支援システム(decision support system)の間で情報が交換される医療情報システムでは,意味内容を共有できなければならない。意味的相互運用性は医療の専門知識をどう表現するかであり,医療側の介在が不可欠となる。
当初は施設内での相互運用性が主たる議論の的であったが,地域医療連携の情報化が推進される現在,複数施設間での相互運用性が求められている。相互運用性を備えたならば地域医療連携システムでは,参加組織を通じて継続的に情報を共有し,表示,蓄積,活用することが可能となる。さらに,多施設共同臨床研究や大規模臨床データベース・患者レジストリーに基づいた研究が広がる現在,複数施設におけるデータ間の相互運用性が大きな課題となっている。相互運用性という言葉は,近年は「データの意味的相互運用性」に力点が置かれている。データの意味的相互運用性は各施設が認識し,強く推進しないと達成し得ない。