アウトカム基盤型教育(OBE)

Outcome Based Education (OBE)

 アウトカム基盤型教育とは,最終的に到達すべき目標・ゴール(アウトカム)を明示し,学習者がその目標・ゴールに向かって主体的に学ぶことを目指す教育システムである。

 従来の教育システムは,知識偏重の教育(知識基盤型教育)から,科目ごとに一般目標(GeneralInstructional Objectives,GIO),行動目標(Specific Behavioral Objectives,SBO)を設定し,目標(Objectives)から方略(Strategy),評価(assessment)へとサイクルを回すことによって,教育の質改善を図ろうとするプロセス基盤型教育へと変化してきた。しかし,目標とした能力が修得されているのか,知識や技術に関する評価は出来ても態度や実践レベルでの評価ができない等の課題が顕在化している。さらに,教育機関の説明責任や教育の質保証が問われるようになり,教育の学習成果として,卒業時には何を学んできたのかではなく何ができるのかを明確に示し,それを確実に達成できるカリキュラムを構築していくアウトカム基盤型教育モデルが提案された。

 医学教育のアウトカム基盤型教育モデルとして,1993年に英国GMC(Tomorrow’s Doctor)が8つのアウトカムを,1996年にカナダ医師会(Can MEDS 2000)が7つのアウトカムを,1999年にACGME(米国卒後研修認証評価審議会)が6つのアウトカムを設定する等,各国の共通アウトカムをもとに教育機関はオリジナルのカリキュラムを構築している。わが国の場合,文科省から医学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―(2011年3月改定)が示され,卒業時までに習得して身につけておくべき実践能力(コンピテンス)を到達目標として,学習過程で修得すべき教育内容が具体的にリストアップされている。

 アウトカム基盤型教育は,到達目標(アウトカム)に実践的能力(コンピテンス)を掲げることから,コンピテンシー基盤型教育と同義として扱われている。「コンピテンシー」という言葉は,企業などの人材育成において「高い業績を上げている者の行動様式や特性,能力」という意味で使われている一方,教育界では「自ら獲得した知識やスキルを実際に活かして成果や効果をもたらす能力」と解釈され,コンピテンシー基盤型教育の場合,後者の意味合いで用いられている。コンピテンシー基盤型教育では何を教えたかではなく,結果的に何がどの程度修得できたかに着目して教育を行うものであり,パフォーマンスレベルをどのように設定するかが重要になる。Dreyfus modelでは技能修得レベルを初心者(novice),新人(advanced beginner),一人前(competent),中堅(proficient),達人(expert)の5段階で示している。卒前教育においてはアドバンスビギナーレベルまで,卒後研修においてコンピテントレベルを目指し,専門研修などの生涯教育によってエキスパートレベルを目指すように連続性をもって段階的にアプローチしていく必要がある。また,目指すべき技能修得レベルまでパフォーマンスを引き上げていくためには,従来の積み上げ方式ではなく,らせん型カリキュラムで教育を設計する必要がある。Millerの学習ピラミッドは,知る(knows)から実践できる(Dose)までの4段階のパフォーマンスレベルを設定している。教育目標の細分化や教育内容の複雑化によって学習者が混沌としてしまうこともあるが,どの時期に,何を,どの程度,修得する必要があるのかを明確に示すことは,学習者がコンピテンシー達成に向けて主体的に歩みだすためのロードマップとなる。

【関連用語】

知識基盤型教育,プロセス基盤型教育,コンピテンシー基盤型教育,コンピ テンス,コンピテンシー,パフォーマンスレベル