Medical fee Payment System
「診療報酬」は,国の決める「医師の技術料」として一般に理解されているが,それ以外にも入院した場合の室料や看護料,放射線技師による撮影料,理学療法士によるリハビリテーション療法等の料金を規定している。また,こうした医療サービスの「本体」部分以外にも,薬や医療材料について,医療保険が医療機関に支払う価格を決めている。
支払う際の原則は,個々の行為の料金に回数を乗じる出来高払いであり,これは実績によって払われない限り,医師の裁量権が担保されないという日本医師会等の主張により,診療報酬が導入された1927年以来踏襲されている。確かに入院料については包括評価が導入されたが,DPCの病院においても手術料等は出来高払いである。また訪問診療料等は登録患者ごとの人頭払いであるが,対象になった場合には,訪問日数等の縛りがある。
各サービスの料金は点数(1点10円)で提示され,点数は全国のどの医療機関のどんな医師が実施してもほとんどの場合は同じである。すなわち,東京の大学病院の教授が行っても,へき地の診療所の若い医師が行っても,同じ「診療行為」に対しては,同じ点数である。地域による相違は,室料だけに認められているが,それも1日当たり最大180円の差にすぎない。こうした対応は,大都市の物価賃金水準を反映しないので不適切にみえるが,医療機関の偏在を緩和するうえで一定の役割を果たしている。
サービスの料金を,4千以上の行為ごとに細かく設定しているだけでなく,それぞれを保険に請求する際の,設備や人員の資格・人数等の要件,及び患者の臨床的な状態についても要件を規定している。すなわち,診療報酬は「料金」(Price)だけでなく,「質」(Quality)と「量」(Quantity)も規定しており,しかも順守をレセプトの審査及び現場における指導・監査によって監視しているので,医療の提供において決定的な影響を与えている。
診療報酬の改定はほぼ2年に1回行われ,そのプロセスは大きく3つの段階に分かれる。第1段階は,全体としての改定率の決定であり,それによって医療費全体の規模が決まる。第2段階は,薬や医療材料の改定があり,薬は銘柄別に,材料は機能分類ごとに改定される。第3段階は,個々の行為の点数と請求要件の改定であり,それによって医療費の配分が決まる。
第1段の全体改定は,高齢化や技術進歩等による医療費の「自然増」を,どこまでマイナス改定によって相殺するかについては,首相による政治判断である。第2段階は,市場における取引価格について薬価調査を実施することによって把握し,加重平均した市場価格に2%の調整幅を上乗せした価格が,原則的に改定後の薬価となるが,販売額が予測よりも大きく増えた新薬等は再算定によっても引き下げられる。
第3段階は,中医協(中央社会保険医療協議会)の諮問を経て厚労大臣が決めるが,診療報酬を所管する保険局医療課が事務局案を作成し,それを医療関係団体と交渉して細部まで規定している。その際,第1段,第2段の改定によって決まった財源の枠の範囲に収まるように,各行為の点数と請求要件の改定を繰り返し,このようにして医療費の総枠だけでなく,細部の配分までを規定している。