Long-Term Care Insurance System
2000(平成12)年4月に社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして創設された介護保険制度は,加齢などにより脳梗塞などの病気やけがをして,寝たきりをはじめ身体が不自由な状態になったり,あるいは認知症を発症したりして,比較的長期に介護が必要になった場合に,かかった費用の1割又は2割を負担することにより,介護サービス事業者の提供するサービスを受けることができる仕組みである。
制度の基本的な考え方は,自立支援,利用者本位,社会保険方式の3つである。具体的には,自立支援とは,単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて,高齢者ができるだけ自立した生活を送れるよう支援することを理念とするものである。また,利用者の選択により,多様な主体から保健医療サービスや福祉サービスを総合的に受けられる仕組みとした。さらに給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用した介護保険の財源は保険料が50%である。介護保険制度の被保険者は,40歳以上の者が対象となり,二種類に分類される。第1号被保険者は65歳以上の者であり,第2号被保険者は医療保険に加入している40歳から64歳までの者である。介護保険サービスについては,65歳以上の者は原因を問わず要支援・要介護状態となったときに,40~64歳の者は特定疾病が原因で要支援・要介護状態となったときに,受けることができる。
保険者である市町村は,第1号被保険者から保険料を徴収するとともに,被保険者からの申請があれば要介護認定を行う。その認定に基づいて,ケアマネジャー(介護支援専門員)が,要介護・要支援者がその心身の状況などに応じた適切なサービスを利用できるように「介護サービスの利用計画」(ケアプラン)や「介護予防ケアプラン」を作成する。ケアプランの作成に当たっては,それぞれの利用者の要介護度と希望に応じた介護サービスが選択される。
介護保険サービスについては,訪問介護(ホームヘルプ)に代表される訪問系サービス,通所介護(デイサービス)に代表される通所系サービス,短期入所生活介護(ショートステイ)に代表される短期滞在系サービス,特定施設(有料老人ホーム等)に代表される居住系サービス,そして介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に代表される入所系サービスまで様々なものがある。サービス提供する対価としての介護報酬は,社会保障審議会介護給付費部会の意見を聞き,厚生労働大臣がサービスの種類毎,要支援・要介護度別に定める。
この制度は,施行から5年後を目途に,必要な見直しを行うこととされていた。その結果,「制度の持続可能性」「明るく活力のある超高齢社会の構築」「社会保障の総合化」を基本的視点として検討を重ね「予防重視型システムへの転換」「施設給付の見直し」が進められた。2011(平成23)年改正(翌年4月施行)では,高齢者が地域で自立した生活を営むことができるようにするために,医療,介護,予防,住まい,生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の実現を図ることが必要ということから「医療と介護の連携の強化等」「介護人材の確保とサービスの質の向上」「高齢者の住まいの整備等」「認知症対策の推進」「市町村(保険者)による主体的な取り組みの推進」がなされた。
直近の2014(平成26)年改正では,(1)要支援1・2の対象者について介護保険本体の給付(予防給付)から,訪問介護と通所介護を外し,対応するサービスについて地域支援事業を再編成する,これに従い地域支援事業を再編成する。(2)個別のサービスでは,通所介護の機能の改革,特に定員10人以下の小規模型については,地域密着型サービスへ移行させ,今後新たな事業所開設については保険者の管理下に置く。(3)特別養護老人ホームの入所対象者を原則要介護3以上にする等が行われた。